はい、正直に言うと手間しかないです（笑）。初めは原料となるハーブの調達と、ハーブごとに違う搾油率のデータを集めるのにとても苦労しました。当然といえば当然ですが、植物も生き物ですから、わずかな条件の変化で同じ結果にならないこともあります。リサーチしていく過程で、自然は絶妙なバランスで成立しているのだと痛感させられました。

例えば、ハーブ採取のためにガイドさんと一緒に野山に入ると、みなさん同じことをおっしゃるんです。根こそぎ詰んでしまうのではなく、次の芽がちゃんと伸びるようなところは残しておいて、と。ちょっとした差がその後の植物の成長速度に大きく影響するからです。私はこのことに“サステナブル”が集約されていると思いました。つまり、次の世代のために何をどう残すか、ということが一番の課題なのではないでしょうか。自然との共生は特別なことではないんですよね。自然環境の現状に少しだけ関心を持つと、関連する社会問題の現状が見えてきます。意外と個々の生活レベルでできることの積み重ねであると気付かされます。

植物のチカラを借りる“ナチュラルな美容”は、半年から1年という長期的なスパンで内側からきれいにしていくものです。それに対し“ケミカルな美容”は、パーマやカラーなどで次の瞬間にガラッと見た目を変えることができる楽しさがあります。ケミカルを全て否定してしまうと、それはそれでちょっとつまらないですよね。私たちは“ケミカルな美容”で出てしまった何かしらの負担を、植物のチカラでできるだけ補うような、ハイブリッドな美容のあり方を模索しています。

やはり次の世代のために何をどう残していくかが大事だと思います。今までの美容はケミカルが主軸だったけれど、私たちがナチュラルなものを見せることで、次の世代は加速度的にこういうものを取り入れてくれるでしょう。そして少しずつスタンダードに近づいていくと思うんです。

来てくださったお客様は、身体の緊張がほぐれ、気持ちが落ち着き、心身共にリラックスできると言ってくださいます。今後は植物由来の天然芳香成分である精油でしか体感できない素晴らしい香りの世界を、より多くの人に伝えていきたいですね。植物の持つパワーを美容にダイレクトに活かすという取り組みは、今後の美容のあり方を模索していく上で、大きなヒントになると実感しています。