未来の選択肢を増やすー「keuzes」が考えるファッションとセクシュアリティ【後編】
女性体型に合わせたメンズパターンのオーダースーツを展開する「keuzes(クーゼス)」代表の田中 史緒里さんとフィッターの大花 ちなみさんへのインタビュー後編です。
ブランドのはじまりは、自身が感じた “ファッションの選択肢が 少ないことに対する不安”から
——ブランド誕生の背景を教えてください。
田中:18歳の頃、周りの友人が成人式で振袖を選んでいたなか、私はかっこいいスーツが着たいと思っていました。ですが、女の子である私がスーツ専門店で「メンズスーツが欲しい」と言う勇気はなく、成人式に出ることを諦めました。その後友人の結婚式でも自分に合った洋服を探すことにとても苦労し、これからも服装でこんなに悩むのだろうかと不安な気持ちを抱いたことを覚えています。同じように、カジュアルな制服があることを条件に学校を選んだり、可愛すぎる制服は着られないからと職業が限られてしまったり。人生で一度きりの成人式や友人の結婚式にも、着たいと思える服が見つからないからと一度も参加したことがない人もいます。そのような洋服によって人生さえも左右されてしまう人たちがいるという現状を解決すべく、「keuzes」を立ち上げました。
服装以外にも、 自分らしくいられる場所をつくりたい
——オーダーメイドスーツ以外にも、リアルイベントも開催されていますね。「SEIJIN-SHIKI」について教えてください。
田中:「keuzes」が一番忙しくなるのは、成人式の時期です。お客様の悩みは着たいものを着られれば解決できると思っていたのですが、スーツを仕立てても「これを成人式当日に着ていけるかは分からない」という方が多く、着たいと思うものを手に入れられたとしても、気持ちが決まるかは当日まで分からない、周りにどう見られるか不安、というさらに先の問題があることに気づかされました。それならば、服装だけでなく自分らしくいられる場所を作る必要があると思い、2023年1月に初のオールジェンダー成人式「SEIJIN-SHIKI」を企画、開催しました。自治体が開催する成人式の予行練習として参加する方や、当日は勇気が出ないから「SEIJIN-SHIKI」で着たい服を着るなど、参加理由は様々。参加者の皆さんがいきいきした表情で楽しみ、涙を流しながら帰っていく姿を見ると、開催した意味を感じたと同時に、今後も開催していこうと私自身が強く決意したイベントになりました。
2023年1月7日に開催された「keuzesのSEIJIN-SHIKI」。自分の好きな服を身に纏った約120人の新成人が集まった。
会場はとてもいきいきとした雰囲気で、主催者、参加者の枠を超えて仲間になっていったそう。
「SEIJIN-SHIKI」で壁一面に掲示されていた「#しかたなくない」をテーマにした企画。
参加者が生活をする上で諦めてしまっていた体や性にまつわる我慢やモヤモヤが記入され、その問題を「#しかたなくない」と捉えられるような機会づくりがおこなわれた。
選択肢を増やし、それぞれが理想とする未来に進めるきっかけとなるブランドでありたい
——今後はどんな未来を想像していますか?
田中:「keuzes」は、お客様と一緒につくっているブランドです。だからこそ聞ける話があると思うので、会話のなかで出た悩みをどうしたら解決できるか探していきたいですね。たとえば、普段着でもどこかに自分らしさを表現できるカジュアルウェアの展開も考えています。
ファッションは、未来すらも左右するものです。こう見られたい、こうなりたいという理想があるなかで、第一印象でできるだけ自分の内面と近しい印象を感じとってもらいたいという人が多い。そう考えると、自分のことを伝えるために服装はとても重要なものだと思います。だからこそ、「keuzes」は、お客様が進みたい未来にできる限り近づけるお手伝いをしていきたいですね。
大花 ちなみ(オオハナ チナミ)
大学卒業後、新卒で関西の交通インフラ企業に入社。鉄道乗務員を経て、カスタマーサポート部門で顧客対応やスタッフの人事管理に従事。業務効率化のための新システム開発管理や顧客満足度向上のための新規プロジェクトも担当。 2022年に顧客として「keuzes」のサービスを利用したことで興味を持ち、同年、株式会社クーゼス初の採用を機に入社。
田中 史緒里(タナカ シオリ)
株式会社クーゼス/keuzes Inc.代表。
1994年、福岡県北九州市生まれ。2018年3月にenter合同会社を設立し、「成人式に何を着たら良いんだろう」という自らの悩みを発端に2019年12月、女性の体に合うメンズライクなスーツブランド「keuzes (クーゼス)」をスタート。 2020年11月に株式会社クーゼスに組織変更、 代表取締役に就任。




