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性教育はタブーじゃない。鈴木えみさんと「子どもたちの未来」について考える

「Seventeen」をはじめ多くのファッション誌の表紙を飾り、10代の頃からモデル、俳優として活躍し続けてきた鈴木えみさん。今年で40歳を迎え、思春期の子どもを持つ母としても日々奮闘しています。そんな彼女が今力を注いでいるのが「性教育」について発信する活動。子育ての経験をきっかけに、子どものより良い未来をサポートする性教育のプロジェクト「Family Heart Talks」を2024年1月に立ち上げました。一児の母として、女性として、そして大人として、鈴木さんが実感している性教育の大切さについてお話を伺いました。

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親子で楽しみながら学べるイベントを 「性教育」の入り口に

——鈴木さんはなぜ「性教育」に興味を持ったのでしょうか?

11歳の娘の存在は大きいですね。小学校に入れば性教育が整っているだろうと考えていましたが、まだまだ足りないと感じてしまって…。例えば体育の授業の際に男女一緒の教室で着替えていたり、お手洗いでの生理用品の設置の有無など、学校によって教育の差を感じました。学校や教育委員会の対応を待っていたら娘は成人してしまうので、家庭単位でできることを始めなくてはいけないと思ったんです。昨年「Family Heart Talks」というプロジェクトを立ち上げ、性教育についての発信も始めました。

——子育てをきっかけに性教育の取り組みがスタートしたんですね。「Family Heart Talks」について教えてください。

「いのちの授業」と題して、性教育に関する親子向けの講演会をおこなっています。家庭内で幼い頃から「性」の話をしやすい雰囲気があれば、子どもが思春期を迎えてもお母さんやお父さんに相談しやすいですよね。「いのちの授業」は、親子で日常的に性の話がしやすくなるようなベースづくりを目的としています。

——「いのちの授業」では、どのように大人と子どもたちに性教育を教えているのですか?

「性教育についての講演会」と聞くと、少しハードルが高いと感じるかもしれません。私たちはなるべく多くの人に聞いてもらいたいので、誰でも参加しやすい雰囲気づくりを心がけています。「いのちの授業」は、親子がそれぞれ性教育に興味を持ち理解できるよう、大人向けと子ども向けの二部構成にしています。第一部は大人向けによくある質問にお答えしたりして、第二部は子ども向けに「ノーゴーテル(NO GO TELL)」の練習をしています。嫌なことをされたらやめてと言う「ノー」、その場から逃げる「ゴー」、出来事を大人に話す「テル」。子どもたちが自分を守るための言葉です。講演会はお母さんやお父さんが集中して話を聞けるよう、会場内に託児所代わりになるワークショップを用意しています。ワークショップは出入り自由で、子どもたちが遊んだり、絵を描いたりと楽しめる内容となっているので、楽しむことを目的に来てくれるといいなと思っています。この「いのちの授業」を入り口に、性教育に興味を持つ人が増えてほしいですね。

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——2024年は全国各地をまわり、1年間で7回の講演会を実施されたそうですが、実際に「いのちの授業」を通してどのようなことを感じましたか?

講演会に参加してくれた方々の性教育への関心の高さが伝わってきました。私自身「いのちの授業」の取材を受ける機会も多いので、社会全体で性教育への関心も高まっているのだと思います。実際に講演会に足を運んでくれるのは、性教育に興味があったり、すでに何かに困っている人。性教育の必要性に気がついていない人にこそ参加してほしいので、保育園でおこなった講演会では保護者の意思にかかわらず参加していただきました。その時に改めて広く想いを届ける難しさを痛感しましたね。どうしたら知識が行き渡るかが、私たちのこれからの課題です。

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「性教育」は「生き方の授業」

——鈴木さんは性教育で何を教えていますか?

性教育と聞くと、まだまだ誤解されている部分も多いです。私は性教育は「生き方を教えること」で、道徳+保健体育だと思っています。
ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(※1)では、身体や生殖の仕組みだけでなく、人間関係やジェンダー平等など、幅広いテーマを含む「包括的性教育」の指針が掲げられています。私は最初にこの指針を知った時「性教育はここまで人生に必要なことを網羅しているんだ」と驚きました。性教育は、将来子どもをもつ・もたないなど、子どもたちが将来選択をする時にも必要になる考え方だと思います。なぜ国語や算数のように義務教育にならないのか不思議ですよね。

(※1)国際セクシュアリティ教育ガイダンス:https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000374167

性教育には、他者を尊重することや関わり方なども含まれています。例えば「バウンダリー」は、人と人との間にある見えない境界線のこと。その線を意識することで、自分も他者も尊重できます。「勝手に他者の身体に触れない」「相手の境界線を超えるような言葉を投げかけない」などがバウンダリーを意識することですが、毎回「話していいですか?」「触っていいですか?」と了承を得るのは現実的ではないですよね。そういう時に性教育をしっかりと学んでいれば、相手の気持ちを理解し、双方が安心できる人間関係を築ける。そんな人になってほしいと思い、性教育をおこなっています。

——性教育は何歳からするのが良いでしょうか?

講演会は主に3〜8歳の子どもとその保護者を対象にしていますが、性教育は早ければ早い方が始めやすいと考えています。言葉が通じない年齢でも、洋服を脱がせる時に「脱がせるね」と一声かけるだけでも良いんです。赤ちゃんにも意思や人権があるので、同意を得る練習になります。

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性教育という言葉がなくなるくらい 当たり前の教育に

——「今日から性教育を学びたい」「子どもに教えたい」と思ったら、まず何をしたら良いでしょうか?

大人の場合は、まずは知ることが大切です。講談社から発行されている『世界で学ばれている性教育』(※2)という本がおすすめです。「ユネスコ国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の翻訳者が監修していて、私はこの本から性教育を学びました。漫画やイラストで分かりやすく説明されているので、文章を読むのが苦手な人でも気軽に性教育について学べます。

(※2)上村彰子(著)、田代美江子(監)(2022)『安全、同意、多様性、年齢別で伝えやすい!ユネスコから学ぶ包括的性教育 親子で考えるから楽しい! 世界で学ばれている性教育 1時間で一生分の「生きる力」3』講談社

子どもに性教育をする時に大切なのは、何でも話しやすい空気を家庭でつくること。幼い子どもは素直な質問をしてきますよね。私はその一つひとつを逃さないようにして、答えられないことがあっても、子どもに「聞いてはいけないことだったのかも」と思わせないように意識して、後日一緒に勉強する時間をとっています。ドラマでラブシーンがあってもチャンネルを変えたことはありません。逆に「今の行動はママだったら嫌だな〜」と話しています。子どもたちもいずれは見るものなので、その前にそれがファンタジーだと分かっているか否かで、その後の体験にも影響していくと思うんです。

私は娘との間に「どんなことを聞かれてもはぐらかさずに答える」というルールを設けています。そうすることで子どもは「自分は誤魔化されていない」と感じ、社会の一員だという意識も生まれます。そして親子でも対等でいることが、話しやすい雰囲気をつくる秘訣です。そのような親子関係は賛否両論ありますが、私は娘の趣味や交友関係にも興味を持って、彼女の周りで起きていることを把握するようにしています。そうすれば、不安なことが起きた時に家族に相談しやすくなり、子どもの変化にも気づきやすくなると思うんです。

娘さんとは友達のように仲良し(鈴木さん提供画像)

また、性教育、つまり生き方についての知識がないと、我が子が加害者になってしまう場合があります。娘には、何か問題が起こった時の当事者が子どもであっても「それを大人に置き換えたらどう思うか」と聞いています。例えばスカートめくりなど、大人がやってはいけないことは、子どもでもやってはいけないですよね。

——性教育の未来をどのように考えていますか?

まず、性教育は生きていく上で必要な知識を身につけることであると社会に浸透させたいです。私たちは子どもたちが生きていく未来を、性教育という言葉を使わなくてもよくなるくらい、教育の一環として当たり前に「性」を学ぶ世界にしていきたいですね。そのために、多くの人に性教育に興味を持ってもらいたいんです。これからは「いのちの授業」だけでなく、性教育を楽しく学べる教材やサブスクリプショングッズなどをつくりたいと考えています。

性教育は、生きていく上で知っておくべき大切なこと。男女の身体の仕組みやジェンダーに関することだけではなく、自分と他者を大切にするための包括的な学びだと分かりました。自分自身や家族がより生きやすい未来をつくるために、性との向き合い方について考えてみませんか?

鈴木 えみ

スズキ エミ

1985年9月13日生まれ、京都府出身。14歳で専属モデルとしてデビュー。「MAQUIA」をはじめ多くのファッション誌で人気モデルとして活躍を続ける。自身のブランド「Lautashi」ではファッションデザイナーとしても活動。一児の母でもある。2024年には性教育の普及を目指した性教育のプロジェクト「Family Heart Talks」を発足。子どもたちにとってのよりよい未来を目指して、イベントなどをおこなっている。

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