eloveロゴ
ブランド

「サステナブルは当たり前になる」アディダス ジャパン副社長が語る、ファッションの未来

世界的スポーツブランドの「アディダス」は2021年3月に、2025年までに全ラインナップのうち9割をサステナブルな製品にすると宣言しました。その背景には、20年以上にわたる取り組みの蓄積があったと、アディダス ジャパン副社長のトーマス・サイラーさんは話します。また社員の皆さんも環境問題にとても意識が高いんだとか。そんなアディダスの文化を探るべく、リノベーションしたばかりの新オフィスでトーマスさんにお話をお伺いしました。

この記事でわかること

  • サステナブルな素材や製造方法が「アディダス」の“当たり前”
  • トップの信念と行動が企業のサステナビリティを推し進める鍵
  • キノコの菌糸体から生まれた革新的なStan Smith Mylo™
1

グローバルブランドだからこそできる、 環境問題へのアプローチ

——2021年3月に発表された「アディダス」の新戦略「Own the Game」のなかで「2024年からはすべての製品にリサイクルされたポリエステルのみを使用する」といった意欲的な目標を掲げた理由について教えてください。

「Own the Game」は2025年までの成長戦略や数値目標をまとめたもので、サステナビリティはそのなかでも重要な位置を占めています。2021年に打ち立てた目標ではありますが、「アディダス」におけるサステナビリティの取り組みは、今に始まったことではなく、20年以上にわたり様々な施策を続けてきました。たとえば2015年に、当時CMOだったエリック・リッキーは環境保護に取り組むNPO「Parley for the Oceans」とパートナーシップを結び、海岸や海沿いのコミュニティで回収したプラスチックゴミを利用したスニーカーのプロトタイプを発表しています。それ以後、社員の機運も高まっていき、今ではサステナブルな素材や製造方法を使用して製品をつくることが「アディダス」の“当たり前”となっています。

——サステナビリティへの意識は社内でも浸透しているのでしょうか?

サステナビリティに関する発表をすると、いつも社内からはポジティブな反応が返ってきます。毎年開催しているサステナビリティ ムーブメント「RUN FOR THE OCEANS」にも、社員は常に積極的に参加してくれます。これは日本に限らず、世界中どこのアディダスでも同じで、環境問題への意識が高い社員が多くいます。社内にはペットボトルの水は置いていませんし、社員全員にトートバックが配布されているので、普段の買い物でもビニール袋をもらう必要はありません。サステナビリティは、「アディダス」の文化なんです。

——そのような文化は、どうしたら育めるのですか?

答えはとてもシンプルです。トップ(決定権のある人)がリーダーシップを発揮して推進するのです。「アディダス」の場合、当時のCMOエリック・リッキーがサステナビリティに対して、とても熱意を燃やしていました。マーケティングの視察で来日していたとき、ある社員が某コーヒー店からプラスチック製のカップにストローを差して出てきたのを見て、彼はその社員に声をかけ、なぜそれが望ましくないのかを説明していた程です。リーダーに信念があり、説得力のある行動をしていれば、部下もついてきてくれるのです。

——グローバルブランドとして、サステナブルな取り組みをすることにどんな意義を感じていますか?

「アディダス」には大きな責任があります。それは、私たちの事業が環境問題に関わっているからです。また同時に、アディダスは解決策の一部にもなれます。再生素材の開発や利用はもちろん、リサイクルの構造をつくりだすこともできるのです。
さらに業界全体で協力することも重要です。AllbirdsやSTELLA McCARTNEY®とのコラボレーションはその一例です。パートナーシップを結ぶことで、1+1が2以上になるんです。こうした協業を続けていけば、業界内の新しい基準をつくることにもなると考えています。

Allbirdsとのコラボレーション

2

機能性とサステナビリティを、 両立させるデザインを目指して

——スタンスミスの革新的なモデル、Stan Smith Mylo™(スタンスミス マイロ)について教えてください。

スタンスミス マイロはキノコの菌糸体から生まれた新素材「Mylo」を使ったコンセプトスニーカーです。「Mylo」は「アディダス」とバイオテクノロジー企業Bolt Threadsとのパートナーシップによって完成した素材です。この素材を使って製品化するにあたって、アディダスの最もアイコニックなシリーズの1つであるスタンスミスを選びました。スタンスミスは元々本革を使用していたので、環境負荷の少ない「Mylo」を使用したことは、とても理にかなった選択だったと思います。

——素材を変えたことで、履きやすさへの影響はあるのでしょうか?

私たちが商品を開発する際になによりも大切にしているのは、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることです。サステナブルな素材を使うことによって副次的な利点が生まれることもありますが、基本的に、機能性や見た目の美しさに影響を与えてしまってはいけません。実際、スタンスミスを本革からヴィーガン仕様に切り替えてからも、お客様から品質が落ちたというお声はほとんどいただいておりません。

——ファッション産業の未来はどのようになると思いますか?

将来的には、どの企業もサステナブルではない方法で商品はつくることは出来なくなるだろうと考えています。これからお客様は、サステナブルなものを求めることが当たり前になってくるはずだからです。もちろんスニーカーだけではなく、車や家電もそうなるでしょう。サステナブルであることは未来のスタンダードになると思います。

「アディダス」のPICK UP ITEM

今回はトーマス・サイラーさんに「アディダス」のサステナブルな取り組みと、その背景にある企業文化について話を伺いました。印象的だったのは、サステナビリティと機能性と美しさは共存するという話です。どれかを我慢するのではなく、そのすべてを兼ね備えたものだって作れるはずだ、という「アディダス」の信念とプライドを感じました。

adidas

アディダス

1949年、アドルフ・ダスラーによって創設されたグローバルスポーツブランド。『スポーツには人々の人生を変える力がある』という企業理念のもと、全てのアスリートの「不可能/目標」を達成することを目指し、シューズやアパレルを展開している。ブランドのアイコンである「スリーストライプス」は、未来へ向けてのチャレンジと目標の達成を象徴している。

other

他の記事

Follow Us

公式Instagramでも
eloveの最新情報をお届けしています

Instagramを見る
elove
「elove by ZOZO」は
ファッションに関するサステナビリティ情報をお届けします。
elove by ZOZO トップ