ありのままを受け入れる。Netflix「ボーイフレンド」キャスティングプロデューサーTaikiさんに聞く、自分らしく生きるヒント
男性同士の恋愛を性別にとらわれない愛のかたちとして描き、出演者それぞれの個性や葛藤を丁寧に映し出したNetflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」。出演者である「ボーイズ」たちが共同生活を送りながら、恋愛関係だけでなく、仲間としてのつながりを育んでいく様子が大きな話題を呼びました。彼らをキャスティングプロデューサーとして支えてきたTaikiさんも、自身のセクシュアリティと向き合ってきた経験のあるLGBTQ+当事者。今回は、苦しさや生きづらさがありながらも、前に進んできたTaikiさんの言葉から、自分らしく生きるためのヒントを探ります。
Netflix「ボーイフレンド」が目指したのは 「ありのまま」を映すこと
モデル、DJとして国内外で活躍するTaikiさん。パリコレクションをはじめ、世界のファッションやカルチャーシーンの第一線で活躍しながら、自身がゲイであることを公言し、当事者としての視点と独自のネットワークを築いてきました。Netflixリアリティシリーズ『ボーイフレンド』では当事者ならではの視点と信頼関係を生かし、出演する「ボーイズ」たちのキャスティングを担当しています。
——Netflix『ボーイフレンド』はシーズン1に引き続き、シーズン2も大きな話題となりました。シーズン1当初から関わられていたTaikiさんはこの番組に、どんな可能性を感じましたか?
この番組を通して「ありのままの自分たちの姿」を視聴者の方々に届けられるのではないかと思いました。これまでテレビやメディアの中では、LGBTQ+の人々が一つのイメージやステレオタイプとして描かれることも多かったように感じていました。当事者の中には「自分たちのリアルとは少し違う」と感じている人も少なくないだろうなと……。だからこそ、彼らが自然体で過ごす姿をそのまま伝えることが、誰かにとって共感や勇気につながるのではないかと感じていましたし、それが番組の目指すところと合致していたのは幸せなことだと思います。
——「ありのまま」を映し出すために、制作で意識していたことはありますか?
Netflixのエグゼクティブプロデューサー太田さんとも共通認識として、できるだけ自然でいられる環境を作ることを大切にしていました。ルールで縛ったり、役割を与えたりしなくても、安心して過ごせる環境があれば、人の感情は自然と動き、その中から物語が生まれるというのが太田さんの考えでした。だからこそ過度な脚色は加えず、彼らが素のままでいられる空気や環境づくりを意識していました。また、ボーイズ自身から生まれるリアルなストーリーを尊重したかったので、制作側と参加者との距離の取り方には常に気を配っていました。
——番組は、視聴者にどんな影響を与えたと感じていますか?
シーズン1の配信後、「番組をきっかけにカミングアウトしました」という声を数多くいただきました。それぞれの状況はさまざまだと思いますが、番組が誰かにとって一歩を踏み出すきっかけになっていたのだと知り、とても感慨深い気持ちになりました。「伝えるかどうか」を自分自身で考え、向き合うということ自体が、その人にとってこれまでの自分を少し超えるような出来事だったのではないかと思っています。
「これって憧れ?それとも恋?」 自分の気持ちに名前がつくまで
——ご自身のセクシュアリティに気づいたのは、いつ頃でしたか?
小学生の頃から、気づけば男性に惹かれることが多く、男性アイドルに興味を抱くこともありました。自分の中では自然なことでしたが、当時はその感情をうまく言葉にできませんでした。それが「憧れ」なのか「恋」なのかも分からなくて、友達の恋愛の話にも同じ温度で混ざれず、モヤモヤを1人で抱えたまま学生時代を過ごしていました。
——その後、どのようにセクシュアリティの悩みと向き合ったのでしょうか?
新宿二丁目に初めて行ったのは、上京して間もない18歳の頃でした。上京するまでの学生時代は、周りに同じ悩みを抱える人がいないように感じていて、自分はどこか「不思議な存在」のように思っていたんです。誰に話していいのかも分からず、もしかしたら同じことで悩んでいる人に出会えるかもしれない、そんな思いで新宿二丁目を訪れました。初めて1人で足を踏み入れたときはドキドキしましたが、同時に「自分の居場所はここかもしれない」と感じる安心感もありました。そこで出会った人たちと話す中で、「自分だけじゃないんだ」と思える瞬間があり、少しずつ自分自身を受け止められるようになっていった気がします。
TaikiさんとパートナーのNoahさん。
カミングアウトが変えた人生観。 「まっすぐに生きる」を選べた理由
——ご両親には、どのようにカミングアウトしましたか?
家族へのカミングアウトは、伝えるべきかどうかとても悩みました。大学2年生の時、初めて男性と付き合い、その後破局してしまって落ち込んでいた時に「どうしたの?」と両親から聞かれ、勢いで話したのがきっかけです。両親は僕のカミングアウトを意外にもすぐに受け止めてくれました。僕はそれまで「セクシュアリティを明かしても、受け入れてもらえないものだ」と思い込んでいたので、「親にカミングアウトはしたくなかった」と伝えたとき、両親から「それはあなた自身が無意識のうちに、どこかでゲイの人たちを偏った見方をしているのかもしれないよ?」と言われたんです。その言葉にハッとしました。自分自身がゲイとして生きることは、どこか線を引かれてしまうのではないかと、決めつけていたことに気づかされたんです。さらに両親は、受け入れてくれただけでなく「親としての視野を広げてくれてありがとう」とも言ってくれたんです。その瞬間、僕は180度人生観が変わって、自分に自信を持って堂々と生きたいと思えるようになりました。
「自分らしさ」は、誰かに話す勇気と “今日着る服”でつくられる
——これまでどのように生きづらさや苦しみを乗り越えてきましたか?
ある時、初対面の人に「ゲイとか嫌いなんだよ」と言われたことがあります。昔の自分だったら戸惑ってしまったと思いますが、両親にカミングアウトをしたことで、自分の中で少し強くなれた部分があったんです。だからこそ、距離を置きたくなる場面でも、むしろ「だからこそ自分のことを知ってもらいたい」と思いました……(笑)。その後も距離を置かずにコミュニケーションを続けていくうちに、「ゲイに対して偏見があったけど、Taikiなら仲良くなれる」と言ってもらえたときは、本当にうれしかったですね。戸惑いや偏見の多くは、「知らないこと」から生まれるのだと考えています。知らないからこそ不安を感じて距離を取ってしまうこともあるのだと思うんです。だからこそ、きちんと向き合って伝えていけば、人と人との関係は少しずつ変わっていくものだと信じています。そうした小さな理解の積み重ねが、社会の空気も少しずつ変えていくのかもしれませんね。
——今、生きづらさを抱える人に伝えたいことはありますか?
「1人じゃない」ということです。同じような悩みを持っている人はいますし、過去に同じ悩みを乗り越えた人もいます。身近じゃなくてもいい。共感できる人を探して、話せる場所を見つけてほしいと思います。自分の悩みを誰かに話すのは怖いことですが、話さないと伝わらない。少しでも言葉にできたら、環境は変わると思っています。
——最後に、ファッションについても教えてください。Taikiさんにとって服は「自分らしさ」とどうつながっていますか?
服は、一番自分自身を表現しやすいアイテムであると思っています。モデル活動をしていた頃は「モデルらしくあろう」とブラックを多く取り入れたコーディネートをすることが多かったのですが、今のパートナーと出会い、一緒に活動する時間を重ねる中で「もっと自分たちらしくしていいんだ」とマインドが変化していきました。最近はグリーンやオレンジなど、カラフルなアイテムも取り入れてファッションを楽しんでいます。テンションを上げたい日は明るい色を選びますし、雨の日には柄物を。年齢を重ねて増えたジャケットスタイルは、羽織るだけで声のトーンや目の力まで変わるような気がします。今日どんな自分でいたいかを、その都度選んでいく。その積み重ねが、自分らしさになっていくのだと思います。
Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」が描いているのは、特別な誰かの物語ではなく、「ありのままの自分」でいることの尊さです。Taikiさんの言葉にも、自分らしく生きるためのヒントが散りばめられていました。昔は傷つくことが多かったというTaikiさん。それでも今は、目の前に壁が現れても「これは試練だな」と受け止め、どうしたら乗り越えられるのかを考えるようになったと教えてくれました。自分が自分であることを隠さないこと。壁にぶつかったときに、ほんの少し前向きに受け止めてみること。そして、今日どんな自分でいたいかを自分で選ぶこと。その小さな積み重ねが、自分らしく生きていく一歩につながるのかもしれません。
Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」シーズン1,2Netflixにて独占配信中。
※本記事は2026年3月時点の取材に基づいた記事です。







