洋服を楽しくアップサイクルできる場所、「NewMake Labo」とは?【前編】
ファッション業界の大量生産、大量廃棄は、現代社会の重要な課題となっています。この課題に着目し、企業やブランドから提供される衣服や余った布をアップサイクルし、新たな価値を生み出すファッションコミュニティ「New Make」。その拠点である「NewMake Labo」ではどんなことがおこなわれているのでしょうか。ディレクターの吉村 真由さんにお話を伺いました。
アップサイクルで衣料品ロスの解決を目指す「NewMake Labo」
「NewMake」の ディレクター 吉村 真由さん
アップサイクルとは?
廃棄されるはずだったものの特性を活かし、アイデアやデザインといった付加価値を加えることで、新たなものに生まれ変わらせること。ファッション業界では、余剰在庫や生産工程で出る残布などを活用する取り組みがおこなわれています。
出典:環境省「サステナブルファッション これからのファッションを持続可能に」 https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
——はじめに「NewMake Labo」について教えてください。
「NewMake Labo」は、循環型ファッションの実現を目指すファッションコミュニティ「NewMake」の思いに共感した仲間が集まる場所です。地球に優しい本当の第一歩は「知る」ことだと考え、アップサイクルなど様々な取り組みを通じて、環境問題に対する意識を高めるきっかけを提供しています。
——なぜアップサイクルに取り組むことになったのですか?
日本では、毎年約50万トン(※1)もの衣服が廃棄されています。一方で、つくり手として、つくったものを簡単に捨てることはできない。こうした問題に取り組むことが必要だと感じたのが始まりです。最近では、企業やブランドから「廃棄品を活用したい」「何らかの形で社会に還元したい」と相談を受けることが増えています。余剰在庫や規格外品をお預かりし、コミュニティメンバーそれぞれの考えや方法でアップサイクルしています。
(※1)環境省「令和2年度ファッションと環境に関する調査業務-『ファッションと環境』調査結果-」(2021年3月)
「NewMake Labo」のコンセプトが書かれているアトリエのウインドウ
多才なデザイナーや裁縫未経験者も集う コミュニティと充実した制作環境
現在コミュニティメンバーは約1,160名。(2023年8月5日時点) ものづくりやファッション、環境問題に関心のある人が参加している。
——デザイナーさんによって作風が違うのも楽しいですね。
企業やブランドから商品を提供いただいた際、その商品に込められた思いや機能、背景にあるストーリーをデザイナーが解釈したうえでコラボレーションするという作り方をしています。アップサイクルは、既に完成されているものにどのように新しい価値を見出すかというものづくり。責任とリスペクトを持ってつくられているんです。
制作過程で余った布も保管。初心者の方のミシンの練習やコラージュなどに活用される。
思いが伝わる企画を通して、 課題を「自分ごと化」する
——これまで取り組まれてきた中で、とくに印象に残っているプロジェクトはありますか?
今年、思い出のある服をリカちゃん人形の服にアップサイクルする「100 My Licca」という企画を実施しました。誕生から56周年を迎えたリカちゃんは今でも親しまれており、5歳のお子さんから幅広い世代の方に参加していただきました。洋服にそれぞれの思いがあることはもちろん、つくる過程で、捨てられるはずだったものが生まれ変わるという気づきこそが、環境問題の「自分ごと化」だと思います。
1枚目:miku moritakeさんの作品 大好きだったお人形の洋服をアップサイクル。 「少女時代の思い出や手に届かない世界への想いを捨てきれなかった女の子が、ドールに想いを投影しドレスを編む」という背景ストーリーで制作。 2枚目:KahoRi Haraさんの作品 ヘアメイクアップアーティストのKahoRiさんは、過去にヘッドピースをつくった際にあまった毛束でリカちゃんの洋服を制作。
捨てられてしまうものに新たな価値を見出す、アップサイクルの可能性
コミュニティメンバーによる手書きのグラフィティ。
——アップサイクルの可能性をどのように捉えていますか?
既存のものに新たな価値を見出すアップサイクルは、アートのような表現活動でもあると考えています。労力が多くかかるため大量につくることは難しいですが、多くの人が新たな知識を得たり行動に移すきっかけとなって、可能性を広げる一つの手段になるからです。
私たちは今後もコミュニティメンバーが主体となり、「NewMake Labo」を通じて個人と企業が協力し合いながら、プロジェクトを展開していきたいと考えています。どんどん、アップサイクルのアイデアが実現できる環境になれば、更に可能性が広がるのではないかと考えています。







