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手仕事で生み出される「洋服ブラシ」の魅力とはー 1着の服を大切に着続けるために【前編】

1着の服を長く大切に着るために欠かせないのが、お手入れ。寒くなる時期に出番が増えるニットやコートは、お手入れが難しいイメージがありますよね。そのお悩みは“洋服ブラシ”で解決するかもしれません。今回ご紹介するのは、大正6年から刷毛(はけ)やブラシを手作業でつくり続けている「宇野刷毛ブラシ製作所」。洋服や靴のお手入れに使うブラシの特徴や効果的なお手入れ方法について、3代目の宇野 千栄子さんと宇野 三千代さんにお伺いしました。

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三代に渡る手仕事が生み出す 手植えブラシができるまで

——「宇野刷毛ブラシ製作所」はいつ頃からブラシづくりを始めたのでしょうか。

三千代さん 創業は1917年(大正6年)です。初代が刷毛づくりからはじまり、徐々にブラシの需要が増えてきたこともあり、刷毛に加えてブラシもつくるようになりました。当初は清掃用や塗装用などの業務用が多かったようですが工業用などが徐々に増えてきていたようです。現在では洋服ブラシやボディブラシなど一般家庭用の製造が多くなりました。

娘の宇野 三千代さん

——野刷毛ブラシができるまでの工程を教えてください。

三千代さん まず、洋服ブラシの台座となる木地をつくり、木地に穴を開けます。そして、毛を必要な長さに切断し、二つ折りにして手で植え込みます。裏側の引き線(縫い目)を隠し、使いやすくするために薄い木の板を貼ります。毛先を整え、全体を磨いて仕上げます。特徴的なのは、“手植え”という作業。一つひとつの毛を穴に植え込んでいくのですが、手で植えることで密度が高まり、耐久性が上がります。毛が抜けにくくなるので、長く使っていただけるんですよ。

木地に錐で穴を開ける様子。毛質や用途を考慮し、洋服ブラシは3.2mmの穴を等間隔に開けていく。

一つひとつの穴に隙間なく植え込んでいく。植え込む毛の量は、これまで培ってきた経験による感覚で決めるのだそう。

——馬や豚など様々な動物の毛を扱われていますが、どのように使い分けていますか?

三千代さん 動物によって毛に含まれる油分やコシ、柔らかさが異なります。また、同じ馬でも白馬毛や黒馬毛といった種による違い、鬣(たてがみ)や尻尾、産毛など部位による違いがあるので、毛質に合った密度やカットを施しています。素材である毛の特性を最大限に活かしたブラシづくりをするためには、全体を見ることが大切なんですね。
私たちが使用している天然毛には、そもそも油分や水分が含まれているので静電気が起きにくく、大切な衣類のお手入れにとても向いています。特に良質な馬の尻尾の産毛は、柔らかさの中にもしっかりとしたコシがあり、洋服ブラシに最適です。

ブラシに使用している獣毛は、主に食用に育てられた畜産の副産物を活用している。お手入れをする服の素材、織り方によって馬毛を使い分ける。上から、カシミヤ用、ウール用ソフトタイプ、ウール用ハードタイプ。柔らかい毛は硬い素材までお手入れ出来るのでカシミヤ用は万能タイプ。

——洋服や靴を日々ブラッシングすることで長持ちするのはなぜですか?

三千代さん ブラシをかけると、表面の埃を払うだけでなく、布の奥に詰まった埃もかきだします。そして繊維を整えることで生地がもつ光沢を出すことができます。絡まりかけた繊維がほぐされることで、毛玉もできにくくなるんですよ。

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ひとつのモノを長く使う。ブラシが果たす サステナブルな役割

——以前は業務用や工業用が多かったという刷毛やブラシ。その役割も変わってきているんですね。

三千代さん はい。お客様の新たなニーズを取り入れて、私たちの代からは一般家庭用向けのブラシも多くなりました。実はブラシは、暮らしの中でもとても便利なんです。洋服や靴の手入れをしたり、掃除をしたり。モノを大切に使いたいという人にはぴったりですね。

——新たに一般家庭向けに販売されるようになってから、お客様の反響はいかがですか?

千栄子さん お客様から「毎年季節の変わり目にクリーニングに出していたけれど、このブラシのおかげで出さなくて済んだ」とお電話をいただいたことがありました。毛玉ができたら、ニットやコートはもう着れないと捨ててしまうこともあるでしょう。でも、ブラシで整えるだけで、また着れるようになるんです。お客様に「使って良かった」と喜んでいただけることが何よりも嬉しいですし、私たちの励みにもなっています。

現在、三代目の宇野 千栄子さん

宇野刷毛ブラシ製作所

ウノハケブラシセイサクジョ

1917年(大正6年)創業。長年にわたって培われた刷毛づくりの技術をもとに、馬や山羊の毛を手で植え揃え、高品質な東京手植ブラシの製造販売をおこなっている。東京の工芸品を世界に発信する「東京手仕事」や「The Wonder500」にも選出され、海外でも注目を集めている。現在は、三代目の宇野 千栄子さん、三千代さん母子が力を合わせて伝統の技を守りながら、ブラシの柄に装飾を施したシリーズなども人気を得ている。

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