海の豊かさと可能性を体感「海のSDGs映画祭2024」【後編】
世界各地に足を運び、気候危機の現状を映像を通じて世に伝え続けているドキュメンタリー映画監督の海南友子さんへのインタビュー後編です。 ZOZOも協力する「海のSDGs映画祭2024」は、海南さんがフェスティバルディレクターを務めています。
映画祭を通じて、みんなで考え、 一歩踏み出す機会をつくる
水没したベネチアの街を歩く観光客。この写真は「ビューティフル アイランズ 〜気候変動 沈む島の記憶~」のジャケットにもなった。
——6月に開催予定の「海のSDGs映画祭2024」について、今回“海”に着目されたのはなぜですか?
気候変動についてのリサーチやドキュメンタリー制作を通じて、海洋プラスチックなどの海に関する問題に関心を持つようになりました。そこで今回は、海に焦点を当てて映画祭を企画しました。また、映画を観るだけではなく、具体的な一歩を踏み出せる機会を提供したいと考えています。
今回の映画祭では、「海洋プラスチック」、「気候変動」、「海の豊かさ」の3つテーマのうちいずれかに当てはまる6作品を選び上映する予定です。さらに、ZOZOと一般社団法人オーシャン太郎による「SDGsワークショップ」や、海をテーマにした「キッズ&ティーンズ ショート動画コンテスト」も企画しています。このコンテストは、海の環境問題、SDGsに対する思いを自由に表現することで、子どもたちが能動的に考えたり調べたりして、自分が住む地域の問題に気づくきっかけになればと思っています。
「ZOZOと学ぶSDGsワークショップ」
海洋プラスチックごみをリサイクルした素材で、
世界に1つだけのオリジナルアイテムを作ろう!
——今回の映画祭では、海岸から回収されたペットボトルを活用したオリジナルTシャツやビーズストラップを作るワークショップを予定されていますが、ファッションと海洋問題の関係性について、どのような考えをお持ちですか?
コロンビア大学に留学していた頃、ある教授の研究室に大量の洗濯機が置かれているのを見て驚きました。その教授は、衣類から出るマイクロプラスチックの研究のために衣料メーカーと共同して、マイクロプラスチックの排出量を削減できる素材について、先進的な研究をおこなっていました。
その教授の研究室で、血液や炭酸飲料水、水などをろ過した紙を見せてもらったところ、驚くことにすべての液体にマイクロプラスチックが含まれていたんです。衣服についても、一回の洗濯で約70万個、フリースはその数倍ものマイクロプラスチックが出ているともいわれており、衝撃を受けました。
毎日着ている衣服から大量のマイクロプラスチックが出ていることにショックを受けたと同時に、衣服選びの重要性を感じ、衣服選びを変えることでこの問題を改善できる可能性もあると感じました。「Shopping for a better world(よりよい世界のためのショッピング)」という言葉があるように、食べ物や衣服を選ぶ際に、より環境にやさしい選択をすることができれば、少しずつでもこの状況を変えていけるのではないかと思っています。問題は深刻ですが、ファッションには様々な可能性があること、そしてそれが私たちに大きな変化をもたらす手段になるのではないかと思っています。
ドキュメンタリー作品を通じて、 未知の可能性を探求したい
米国アラスカ州シシュマレフ島にて撮影中の海南さん。
——これからやりたいこと、展望を教えてください。
「海のSDGs映画祭」は、来年以降も続けていきたいと考えています。また、2010年に公開した「ビューティフル アイランズ 〜気候変動 沈む島の記憶〜」で訪れた3つの島をもう一度撮影しに行きたいと思っています。ドキュメンタリーは、時間が経過した頃に同じ場所をもう一度訪れ撮影することに、その本質があると思っています。もしかすると何も変わっていないかもしれないし、どのような変化に出会えるのかは分からないけれど、環境や現地の人々の変化を探しに行きたいですね。
ドキュメンタリーは、取材前に想定してたこととは全く違うことが起きた時に良い作品ができるんです。私はいつもこのことを「行き先のわからない船に乗る」と表現していますが、辿り着く岸辺がどこなのか、それが分からないのがすごく楽しいんです。気候変動についても、今後さらなる変化が起きていくと思うので、まだ見ぬ岸辺に向かって船を進めるような作品を、もう一度つくりたいと思っています。
——作品や映画祭を通じて伝えたいメッセージはありますか?
「世界は変えられる」ということです。1992年、私が大学生だった頃は、日本では分別やリサイクルの文化は一般的ではありませんでしたが、2024年の今では、多くの人が当たり前のようにそれを実践しています。これは自然に変わったのではなく、誰かが一歩を踏み出した結果だと思うんです。だから、年齢など関係なく、自分を含め変えるべきだと思うことは必ず変えられると信じています。
現代の私たちは、選挙権を持つことや女性の社会進出など、誰かが一歩踏み出してくれた奇跡の上に生きています。私はドキュメンタリーの作品や「海のSDGs映画祭2024」を通じて、こうした考えを共有できたら嬉しいなと思っています。
海のSDGs映画祭2024
海南さんが主催する映画祭で、海をテーマにセレクトされた映画上映、またSDGsワークショップや専門家を招いてのシンポジウムなども同時開催します。子どもから大人まで、海や地球、SDGsについて楽しみながら学べる機会になることを願って企画された映画祭です。
「ZOZOと学ぶSDGsワークショップ」では、海洋プラスチックごみをリサイクルした素材で、オリジナルTシャツやビーズストラップを制作します。
詳細は映画祭公式サイトや公式Xをご確認ください。
会期:2024年6月1日(土)〜6月8日(土)
会場:東京・渋谷 国連大学、ヒューマントラストシネマ渋谷
詳細:(※1)(※2)
(※1)映画祭公式サイト https://kanatomoko.jp/sdgsff (※2)公式X https://twitter.com/uminoSDGsFF









