宇宙の観測データから見る、未来の地球のための暮らしやファッションの選択とは【後編】
JAXAで活躍する山本さんへのインタビュー。前編では、宇宙から観測したデータを通して見える、今地球環境において起きている変化についてお話を伺いました。後編では、ファッションを含め、人間の行動が地球に及ぼしている影響について考えながら、私たちができることについて山本さんと共に探っていきます。
日々の行動やファッションの選択が 未来をつくる?宇宙から見る地球環境
JAXA(宇宙航空研究開発機構)第一宇宙技術部門地球観測研究センター 山本 晃輔さん
——私たち一人ひとりの行動が地球環境に影響を及ぼしていることも、宇宙のデータから確認できるのでしょうか?
山本 私たち一人ひとりの行動が地球に変化をもたらすイメージは、なかなか持ちづらいかもしれませんが、宇宙からの観測データは、私たちの行動が地球環境に影響を及ぼしていることを明らかにしています。例えば、コロナ禍の行動制限は、私たちの行動の地球環境への影響をはかる大きな社会実験になったといわれています。
JAXAの地球観測衛星GOSAT「いぶき」が観測したCO2濃度データを使って、東京における2016年~2020年の1月~4月の月別のCO2増加指標を算出したもの。2020年(特に3月~4月)は以前の年に比べて概ね小さく、コロナ禍の活動自粛の期間に合致する。
人間の活動が制限されたことにより、CO2の排出量が大きく減少し、その結果は人工衛星の観測データにもはっきりと表れています(※)。私たち一人ひとりが本気で取り組むことで、地球環境によい変化をもたらせることが実証された事例です。私たちの行動が地球にどう影響するかを知れば、未来のためにどのようなアクションが必要か考えることができますよね。
出典:JAXA 「いぶき」による都市のCO2変化 https://earth.jaxa.jp/covid19/ghg-local/index.html
地球の未来のために、 私たち一人ひとりができること
——山本さんが、一人の生活者として、暮らしの中で心がけていることは何ですか?
山本 日常的に使うものに愛着を持ち、長く使うことが大事だと思っているので、消耗品でない限りは、なるべく長く使えるものを選ぶようにしています。使っているうちに経年変化していく姿を見るのも好きですし、愛着も湧きます。長く使い続けるのに必要なメンテナンスも自分でするようにしています。
——山本さんが長く愛用しているアイテムを教えてください。
20年以上愛用している、お気に入りの名入りハンカチ
このタオルハンカチは、20年以上愛用しています。実は、叔母が私が幼い頃に名入れをし、プレゼントしてくれたものだと最近知りました。ほつれもありますが、今も現役です。
撮影当日もいつも通り、ボトムスのポケットに入れて持ってきたとのこと。
経年変化を楽しむ、革のペンケース
大学入学時にプレゼントでいただいた革のペンケースは、10年以上使っています。ところどころにインクの汚れや水をこぼしたシミがありますが、それも味かなと思っています。
初任給で購入した腕時計
こちらは私が初任給で購入した中古の機械式腕時計です。革のベルト部分が気に入って買いました。だいぶ色褪せてしまいましたが、大切な思い出が詰まっている時計です。
この腕時計には社会人になったばかりの頃の思い出が詰まっている。
——ファッション業界は、環境に及ぼすマイナスの影響が大きいとされていますが、ものを大切に使い続けるために、山本さんは何が大切だとお考えですか?
山本 作り手に長持ちするものを作ってもらうことを期待する一方で、選ぶ際に「質が高い」「デザインがいい」といったことに加え、お店に並ぶまでの背景や、ブランドに込められた想いやストーリーにも意識を向けると、自分の使い方も変わってくると思います。こういった部分にも共感して購入したものであれば、いつか不要になったとしても、「捨てる」という選択ではなく、次の誰かに「譲る」ことを選択したくなるかもしれません。
五感を使って、 身の回りの環境の変化を感じとる
——暮らしの中にある、地球の未来につながるアクションとは?
山本 私はいつも衛星画像を通して見ている場所を実際に旅して、その土地の環境を肌で感じることが好きですね。旅先で服を選ぶ時も「今日は暑いから涼しい服を着よう」で終わりではなく、昨年の同時期と比べて今年はかなり暑いといった、気温の変化が気になります。
旅行や遠出をした際にその場所の気候や風景を楽しんでいると、いつも過ごす場所とは少し違うことに気が付きます。そのときに「なぜだろう?」と考えることは、環境の変化や地球の課題について考えるきっかけにもなっていますね。
山本 人は宇宙や歴史のように、日常の生活から時空間的に離れていることに夢やロマンを感じやすいと思います。その観点では、日常生活に密接にかかわる周辺の環境に常に意識を向け続けるのは地味な作業かもしれませんが、身近な分、少し見方を変えれば面白く捉えられるきっかけも多いはずです。JAXAでは、人工衛星による地球観測を通して、宇宙からの視点で地球の今を知り、より良い未来を作るための情報を発信しています。
興味の入り口は、宇宙に関心があれば宇宙から、ファッション好きであればファッションから、それぞれに合ったところからで良いと思います。自分の好きな物事をきっかけに、その周辺を取り巻く環境に関心を持つことは、誰にでもできる地球のための第一歩なのではないでしょうか。
山本 晃輔(ヤマモト コウスケ)
工学研究科 社会基盤工学専攻修了。JAXA(宇宙航空研究開発機構)第一宇宙技術部門地球観測研究センターにて、全球降水計画(GPM)主衛星の利用研究や陸上の水循環シミュレーションシステム(Today’s Earth)の研究開発・運用などに従事。趣味は音楽(DTM作曲、ギター・ピアノ・サックス演奏)、旅行、自転車。






