服の背景をもっと身近に。ARCH&LINEが始めたデジタル製品パスポート(DPP)とは
お気に入りの服を選ぶとき、デザインや価格は気にしていても、その服がどこで、どのようにつくられたのかまで知る機会は、意外と少ないかもしれません。子ども服を中心に、家族で楽しめるアイテムを展開する「ARCH&LINE(アーチアンドライン)」では、現在、デジタル製品パスポート(DPP)の本格導入に向けて、服ができるまでの過程を見られる仕組みを試験的に取り入れています。今回はARCH&LINE代表の小池直人さんに、この取り組みを始めた理由や、その先に描いている服との新しい付き合い方について伺いました。
服にも「パスポート」がある? デジタル製品パスポート(DPP)とは
デジタル製品パスポート(DPP)とは、どんな原料から、どこでどのようにつくられたのか。お手入れや修理の方法、リサイクルや廃棄に関する情報など、1着の服にまつわる様々な情報を「履歴書」のようにデータとして記録。購入を検討する際から着用中のお手入れ、手放した後まで、その服に関する情報を確認し、活用できるようにする仕組みです。ARCH&LINEでは、対象商品の品質表示タグにDPPのページ(※1)にアクセスできる二次元コードをプリント。スマートフォンのカメラで二次元コードを読み取るだけで、専用アプリをインストールすることなく、原料が育つ畑から加工・縫製を経て商品になるまでの過程や、その製品をつくる際に排出されるCO2量などを確認できます。
(※1)遷移先画面例:https://dpp-viewer.updater-blockchain.jp/products/AL262301
品質表示タグにある二次元コードをスマートフォンで読み取るだけ。専用アプリは不要です。
現在ARCH&LINEでは、本格的なDPP導入に向けた試験的な取り組みとして、まずカットソーアイテムから商品の情報を見える化しています。今後は仕組みの開発を進めながら、対象アイテムを順次広げていく予定です。
「自分たちの目が届く範囲でつくる」。 ARCH&LINEのものづくり
ARCH&LINEがDPPを導入しようと思ったきっかけは、B Corp認証(※2)の取得でした。認証取得に向けて自社の事業活動を見直すなかで生まれたのが、「自分たちがつくっている服そのものは、どれだけ環境に負荷をかけているのだろう」という疑問だったといいます。
そこでまず取り組んだのが、1着の服を原材料まで遡ること。縫製工場や生地までは把握できても、その先の糸や原料となると、情報が途切れてしまうこともあったそうです。すべてが手探りだったと振り返る小池さん。一つひとつ問い合わせ、確認を重ねながら、途切れていた情報を丁寧につないでいきました。さらに、DPPではリサイクルや廃棄に関する情報を開示するため、どんな素材の組み合わせなら再生できるのか、服をつくる前の設計段階から考えておくことも大切にしているとのこと。そして、その根底にあるのが「自分たちの目が届く範囲でものづくりをする」というARCH&LINEの姿勢です。どこで、誰が、どのようにつくっているのかを知ることは、そこで働く人たちの環境に目を向けることにもつながります。つくる過程まで自分たちで確かめることが、服を手に取る人の安心にもつながってほしいと小池さんは考えています。
こうした取り組みには、製品ごとのCO2排出量や材料・工場を把握することに加え、今後EUで予定されているDPP義務化に備える意味もあります。
サイズアウトした、その先へ。
1着1着の『履歴』を少しずつ見えるようにしていくなかで、小池さんが届けたいのは、たくさんの数字や情報そのものではありません。期待しているのは、服を選ぶときに「価格」や「デザイン」に加えて、「どうつくられたか」という3つ目の視点が加わることです。そして、子ども服をつくるARCH&LINEだからこそ目を向けているのが「買ったあと」。子ども服には、成長とともにいつかサイズアウトするときがやってきます。ARCH&LINEでは以前から、服を兄弟や友人へ受け継ぎながら楽しめるものづくりを大切にしてきました。
服が次の人へ受け継がれる際に、その1着のストーリーも一緒につないでいける仕組みも開発中です。今後は、その服がいつ、どこで、どのようにつくられたのか、誰が持っていたのかといった情報も、次の持ち主へ引き継げるようになることを目指しています。1人目から2人目へ、さらにその次へ。服だけではなく、そこに込められたものづくりのストーリーまで受け継いでいく。ARCH&LINEは、そんな未来を見据えながらDPPの可能性を広げています。
デジタル製品パスポート(DPP)と聞くと、少し難しいものと感じるかもしれません。小池さんが大切にしているのは、ものづくりのストーリーまで含めてファッションを楽しむこと。こうした取り組みも、いつもの服をもっと知るための入口の一つ。「子どもと大人が一緒にファッションを楽しめること」をものづくりの原点に、性別や年齢にとらわれないデザインを提案してきたARCH&LINE。服を着ることと、その背景を知ること。その二つを切り離すのではなく、どちらもいつものファッションの延長として捉えてみる。次に「これ欲しい!」と思える服に出合ったとき、その服がどうやってつくられているのかまで少しのぞいてみると、愛着が湧いていつもの服選びにも新しい発見があるかもしれません。
※本記事は2026年10月時点の取材に基づいた記事です。

ARCH&LINE
アーチアンドライン
ARCH&LINEのものづくりの基本は、子どもと大人が一緒にファッションを楽しめること。子ども服でありながらディテールまでこだわったデザイン。子どもの成長と共に、風合いも増していく上質な素材を使い、いつの時代でもスタンダードで美しいと思える服づくりを目指しています。







